2011年5月19日~2011年5月21日
- さっぽろ芸術文化の館(旧北海道厚生年金会館)
- 札幌市教育文化会館
- ロイトン札幌
- 札幌プリンスホテル 国際館パミール
- 東京ドームホテル札幌(旧札幌後楽園ホテル)
血糖コントロール不良な2型糖尿病に対する生活習慣改善を主体とした介入法の有用性 -療養指導とSMBGの活用を通じて-
那珂記念クリニック 療養指導部 看護科 道口佐多子、佐藤千代子
那珂記念クリニック 内科 斎藤三代子、玉澤敦子、石田英則、遅野井健
目的
初診時血糖コントロール不良の2型糖尿病患者への生活習慣是正の効用を検討した。
対象・方法
対象は2009年9月から1年間にHbA1c9%以上で初診し、薬物療法なしで6ヶ月間経過観察し得た60例(男/女:46/14、年齢52.±11.37歳)。
結果
初診時HbA1c10.6±1.43%、BMI26.1±4.25で、3、6ケ月後にHbA1cは7.6±1.24、7.2±1.35%、BMIは25.5±4.13、25.3±4.21Kgへと改善した。最終HbA1c改善が1%未満の9例は1ー3%の17例、3%以上の34例よりSMBG回数が少なかった。血糖コントロール改善不良例では理解力や通院、治療への意欲などの問題を抱えていた。
考察
2型糖尿病患者への積極的な生活習慣の是正で十分なコントロール改善が得られ、初期介入での療養指導の有用性が示された。
SU薬使用初診患者における動脈硬化の進展と治療経過の検討
那珂記念クリニック 内科 斎藤三代子、石田英則、玉澤敦子、遅野井健
目的
SU薬の動脈硬化進展への関与とSU薬低減の可能性を検討する。
対象・方法
初診時経口薬使用2型糖尿病79例(男性47例、女性32例、年齢61.7±10.5歳、罹病期間8.3±8.0年)。
結果
HbA1c7.5%未満のSU群(24例)で頚動脈内膜中膜複合体の最大肥厚度≧1mmの者は70.8%と非SU群(18例)の32%に比して高頻度で、大動脈脈波伝播速度もSU群で1839±453.9mm/secと非SU群の1539.7±342.1に比して高かった。SU薬使用例(54例)ではαGI(併用率44.4%→83.3%)やビグアナイド(24.1%→61.1%)の追加や増量により1年後にはSU薬使用頻度は24.1%に減少し血糖コントロールや体重はむしろ改善した。
結語
動脈硬化進展へのSU薬の関与が示唆されたが、SU薬使用例においてもIRI高値例やSU単独例においては作用機序の異なる非SU薬の併用によりSU薬の減量や中止が可能と考えられた。
シタグリプチンとα-GI・メトホルミン併用療法の検討
那珂記念クリニック 内科 玉澤敦子、斎藤三代子、石田英則、遅野井健
那珂記念クリニック 療養指導部 道口佐多子
目的
α-GI、Met単独、α-GI+Met2剤併用の2型糖尿病患者にシタグリプチン50mg/日(Sita)を追加、α-GI+Met+SU・グリニド3剤併用患者のSU・グリニドをSitaへ変更、Sitaとα-GI+Met3剤併用療法の有用性を検討。
対象・方法
α-GI単独(A群18名)、Met単独(M群10名)、両者併用(AM群33名)投与にSitaを追加。3剤併用(S群12名)のSU・グリニドをSitaへ変更、12週後のHbA1c、GA、PPG、BMIを検討。
結果
A群、M群、AM群ではHbA1cは1.29%、0.95%、1.06%低下し、GAは4.25%、3.79%、3.30%低下し、PPGは78.7mg/dl、34.0mg/dl、31.9mg/dl低下し、BMIは変動しなかった。S群ではSitaへ変更後に全ての指標に悪化を認めなかった。
考察
α-GIやMet、α-GI+MetへのSitaの追加は低血糖や体重増加を起こしにくく、少量のSUと同等の効果が得られ、経口インクレチン関連薬の併用組合わせとして有用性が高い。
糖尿病患者家族の療養上の支援の実態 -病状理解と今後の可能性の検討-
那珂記念クリニック 療養指導部 看護科 小野陽子、道口佐多子、米川由香
那珂記念クリニック 内科 斎藤三代子、玉澤敦子、石田英則、遅野井健
目的
家族支援の必要な糖尿病患者の実態と支援の可能性の検討。
対象・方法
75歳以上の25例(高齢者群)と、合併症が進行した(網膜症A3/腎症3期以上)31例(合併症群)の家族に、患者との関係、病状理解、現在の支援と今後の可能性を対面調査した。
結果
何れの群もほぼ全例で病状把握は十分としていたが、血糖コントロールは高齢者群70.8%、合併症群61.3%で一致し、網膜症は何れの群でもほぼ1/3、腎症では高齢者群37.5%、合併症群45.2%で一致していた。現在と病状変化時の援助は、何れの群も通院支援が最多で、次に食事管理、服薬管理であった。腎症3期以上(19例)の家族は、血糖コントロールは52.6%で一致、腎症の存在は47.4%が把握していたが、食事管理の援助は36.8%であった。
考察
家族支援を要する糖尿病患者の家族へは適切な指導介入によって更なる病状の認識が必要と思われた。
初診時糖尿病患者の実態調査 -療養指導開始前情報収集用紙からの検討-
那珂記念クリニック 療養指導部 看護科 櫛笥弘美、道口佐多子、及川弥生
那珂記念クリニック 内科 玉澤敦子、斎藤三代子、石田英則、遅野井健
目的
療養指導に不可欠な詳細な情報取得目的とし、指導開始前にアンケート式情報収集用紙を用い実態を検討
対象・方法
2009.10から2010.9外来指導を開始した306名(男204/女102名、年齢57.6歳、HbA1c8.1%、BMI25.6)に対面式聴取
結果
既診断者(170名、罹病9.2年)は未診断者(136名)と比べ食生活・運動に関して差なし。食習慣の問題はほぼ全例(間食70.6%、加糖飲料摂取58.5%)、毎日、いつでも摂取。運動習慣は半数(毎日歩行65.2%)。知識の理解は血糖値50.0%、HbA1c45.9%が指示エネルギー32.4%、IBW27.1%と比べ高かった。合併症の知識は動脈硬化17.1%が網膜症46.5%、神経障害33.5%、腎症29.4%と比べ低かった。
考察
単に血糖値、HbA1cといった数値を呈示するだけでなく、目標に近づくため患者自身が食の行動変容を起こす一助となる目安や実際の動脈硬化指標の呈示が指導に重要と考えられた。
血糖コントロール不良患者における糖尿病認識度調査の検討
那珂記念クリニック 療養指導部 看護科 佐藤江里、道口佐多子、雨川智子
那珂記念クリニック 内科 玉澤敦子、斎藤三代子、石田英則、遅野井健
目的
血糖コントロール不良患者で認識度を把握することにより、自己病態認識が治療に及ぼす影響について検討した
対象・方法
外来通院中のHbA1c8.0%以上の278名にアンケート方式で、理解度、自己評価、意識度、実践不能の理由を調査した。
結果
(1)食事療法と血糖、合併症進展との関連を95%、「血糖管理は不良」と82%が答え、しかし生活習慣を変えて血糖を良くしたい50%、合併症を防ぎたい59%(2)実践の自己評価は食事45/100点、運動41/100点(3)できない理由は食事が「甘味や果実の嗜好」45%、「外食」38%、「空腹感」32%、運動が「忙しい」53%、「面倒くさい」24%(4)網膜症有の36%、腎症有の40%が「無し」と軽視し、半数が病期不明、38%が病期誤認
考察
合併症病期も含めた詳細な病態を伝達、実現可能な具体的目標を設定し、習慣変容により努力に見合う有効性を実感させる指導が重要と考えられた。
「足チェックシート」の新しい活用法の検討
那珂記念クリニック 療養指導部 看護科 大槻朋美、道口佐多子、石川ひとみ
那珂記念クリニック 内科 斎藤三代子、玉澤敦子、石田英則、遅野井健
目的
日本糖尿病対策推進会議作成の『足チェックシート』(足チェック)の活用方法を検討。
対象
2006年以降足チェックを実施した糖尿病患者4176例。
結果
こむら返り27.5%、足先のしびれ15.4%、ジンジン・ピリピリ15.1%、感覚異常13.4%、足の痛み6.0%は全国調査とほぼ同様で自覚症状は加齢とともに増加した。網膜症陽性者における神経障害者および自覚症状異常者の頻度は36.6%および33.6%であり腎症では36.7%および33.7%、動脈硬化35.9%および32.2%であった。神経障害群での合併症頻度は網膜症63.9%、腎症64.2%、動脈硬化56.9%であり自覚症状陽性者でのそれぞれ59.4%、59.7%、51.6%に比して高かった。
結語
簡易診断基準での神経障害群では高率に他の合併症を併発しており、足チェックで自覚症状を有する例や神経障害群においては他の合併症の検索が不可欠と考えられた。
糖尿病新患に対する栄養指導の留意点について -糖尿病診断後の食行動の変化をふまえて-
那珂記念クリニック 療養指導部 栄養科 久賀なつみ、鈴木啓子、上田恵美
那珂記念クリニック 療養指導部 道口佐多子
那珂記念クリニック 内科 斎藤三代子、玉澤敦子、石田英則、遅野井健
はじめに
当院は糖尿病専門クリニックであり、250から300例/月の栄養指導を実施しており、指導充実のため詳細な食行動調査を実施した。
対象・方法
2010年8月からの2ヶ月間に食事調査を実施した糖尿病新患55例(M/F:34/21、平均年齢58.0歳、平均罹病期間4.0年、平均BMI25.3、平均HbA1c7.8%)に食事記録の評価、嗜好品の量と頻度、民間療法の有無、糖尿病診断後の食品や嗜好品の増減を調査した。
結果・考察
摂取エネルギーは平均32.5kcal/IBWで、糖尿病診断後に野菜の増、油の減、主食の減が約60%で認められた。肥満例についてみると、エネルギー摂取が過剰な例には表1、3の制限と民間療法の評価が必要であり、適正以下の例には継続に向けた支援と指導が重要と思われた。さらに、糖尿病診断を契機に食生活は変化し、食事調査票の評価や指導の際には患者の背景に対する十分な配慮が求められる。
服薬コンプライアンス不良患者における糖尿病認識度調査の検討 -アカルボースOD錠への変更経過より-
那珂記念クリニック 療養指導部 薬剤科 鯉淵忠敬
那珂記念クリニック 療養指導部 道口佐多子、佐藤江里
那珂記念クリニック 内科 玉澤敦子、斎藤三代子、石田英則、遅野井健
目的
αーGI服薬コンプライアンス低下の背景を明らかにすると共に、アカルボースOD錠変更による改善の可能性を探ること。
対象・方法
服薬率80%以下の患者51名にアンケート方式で調査
結果
(1)生活習慣を変えて血糖を良くしたい35%、合併症を防ぎたい55% (2)薬物療法と血糖、合併症進展との関連を74%が理解、35%が服用の継続の必要性を感ぜず (3)服薬率不良のはずが22%で「全て飲んでいる」 (4)網膜症有の75%、腎症有の77%が「無し」と軽視 (5)HbA1cの軽視は6.5%以上群で33%
考察
薬剤の必要性認識は低く、服薬現状把握もされていなかった。合併症を軽視し、コントロール不良群でHbA1c値を軽視していた。患者背景や病状に応じ薬剤に関する情報を適切に伝えた上で服薬行動改善にOD錠変更は有効であると考える。