茨城県那珂市にある、主に糖尿病や動脈硬化など、生活習慣に関わる内科クリニック(医院)です。

医療法人健清会

2006年5月25日~2006年5月27日(東京国際フォーラム)

臨床検査技師による糖尿病患者の足観察の有用性と病変の特徴

椎名 紀恵、塩沢 奈々、鹿志村 まゆみ、道口 佐多子、斎藤 三代子、遅野井 健

目的

臨床検査技師による糖尿病患者の足病変観察の有用性の検討

方法

糖尿病患者217例(年齢60.4歳、罹病期間9.5年、HbA1c6.9%)を対象に、心電図検査時に足病変の観察とアキレス腱反射、振動覚閾値、モノフィラメントによる圧触覚閾値検査(TT)を行った。(内104例は神経伝導速度検査(NCV)も実施)

結果

足病変は134例、234病変(保有率61.8%)であり、60歳以上の68.5%は60歳未満の51.7%に比べ高く、病変は角化(65人)、ひびわれ(47人)が多く、複数病変を有する例も多かった。足病変のある群のTT異常者17.2%はない群6%に比べ多く、NCV異常者は足病変の頻度が高かった。

考察

臨床検査技師が日常検査の際に足を観察することは有意義で、足病変と表在性の知覚異常との関連やNCV低下との関連も示され、足病変のある場合には神経障害を念頭に置いて積極的な神経機能検査を行うべきと思われた。

ピオグリタゾンの有効性と安全性の検討
―比較的良好な血糖コントロールの2型糖尿病において―

遅野井 健、斎藤 三代子、高柳 尚子

目的

ピオグリタゾン(PIO)の比較的血糖コントロールの良好な2型糖尿病における有効性と安全性の検討

方法

HbA1c6.0から7.5%の2型糖尿病患者73例(男性43例、女性30例、平均年齢63.8歳)を対象にPIO15mg/day を投与し、血糖コントロール、脂質代謝、HOMA-IR、BMI、とInBody3.2を用いて体脂肪量、体水分量を24週間評価した。

結果

浮腫は女性3例(4.1%)に発現し、血糖コントロール、脂質代謝、HOMA-IRは有意に改善し、BMI22.4±3.2、体水分量30.1±5.5Lは24週間後ではそれぞれ22.8±3.2、30.6±5.4Lと有意に増加した。体脂肪量はインスリン分泌系薬剤のみで10.6±5.2Kgから24週間後に11.9±5.5Kgへと有意に増加した。

考察

比較的良好な血糖コントロールの2型糖尿病におけるPIO導入は、BMIと体水分量の増加を認めたが、体脂肪量増加や臨床的浮腫は少なく、有効かつ安全であった。

初診時血糖コントロール不良な2型糖尿病患者の
臨床経過に関する検討(CoDiCを用いて)

高柳 尚子、 斎藤 三代子、 遅野井 健

目的

血糖コントロール不良な2型糖尿病(DM)患者の臨床経過を検討

方法

初診時HbA1c≧10%の2型DM患者188名を対象に2年間経過観察

成績

全体のHbA1cは6ヶ月後まで急速に改善し、2年後にはHbA1c6.5%未満が40.4%、8.0%以上が21.8%であった。既治療患者62名の使用薬剤はSU剤が多く(62.9%)、未治療患者へはα-GI単剤での開始が多かった(平均4.4±4.1ヶ月後に開始)。インスリンは3ヶ月後まで急速に増加し、最終的にはインスリン50.0%、SU剤6.9%、他の経口剤39.9%であった。 2年後のHbA1c良好群は、不良群に比べ高齢で罹病期間が短く、未治療例が多かった。

結論

インスリン導入は約3ヶ月で終了し、内服薬はインスリン非分泌型からが多かった。初診時血糖コントロール不良な既治療患者ではインスリン導入の可能性が高く、比較的若年で罹病期間が長い例が最終的なコントロール不良群に多く問題である。

初診時血糖コントロール不良な2型糖尿病患者の臨床結果に関する検討
―治療中断者の特徴も含めたCoDiCを用いての検討―

斎藤 三代子、 高柳 尚子、 遅野井 健

目的

コントロール不良新患の2年間の臨床経過を評価。

方法

HbA1c≧10%の2型糖尿病303例(54.4±12.7歳、HbA1c11.6±1.5%)の治療経過の検討。未治療224例(治療歴なし164例、中断経験者60例)、既治療79例。

結果

HbA1c(患者数)は3、6、24ヶ月後には8.2±1.7%(270)、7.1±1.8%(241)、7.1±1.5%(188)であり、HbA1cは6ヶ月まで急速に改善した。累積中断者も同様に12例、30例、62例と増加し、中断時期は平均14.1±5.4ヶ月後、中断時平均HbA1cは7.3±2.0%であった。中断者は初診時年齢が若く、中断経験者が多かった。既治療者ではSU剤(62.9%)が多かったが、当院ではインスリン(50%)、SU剤以外の経口剤(39.9%)、SU剤(6.9%)となった。

考察

コントロール不良新患でも40%がHbA1c6.5%未満へと改善したが中断も20%認められた。若年で中断歴のある例では中断防止を念頭に置いた適切な対応が必要である。

当院糖尿病外来における民間療法の実態

豊田 裕美、 道口 佐多子、 鈴木 啓子、 上田 恵美、 斎藤 三代子、 遅野井 健

目的

民間療法実施者の増加に伴い、治療の妨げとなりうる食品等の摂取状況について検討した。

方法

対象は食事指導を行った糖尿病患者418例(男276、女142、年齢61.4歳、HbA1c6.6%、罹病期間9.3年)で、民間療法の有無と種類、目的、効果、動機などを調査した。

結果

48.3%が民間療法実施者で、糖尿病改善(33.3%)や健康増進(20.9%)を期待しての食品(42.4%)やお茶(23.7%)の摂取が多かった。問題の食品摂取者21例(5%)には中止を指導したが、8例が継続、11例が中止、2例が治療中断した。中止例ではHbA1cが6.7%から6.4%へと低下し、網膜症が多く(72.7%)、自己合併症への認識も高かった。中断者には民間療法への強い思い入れも認められた。

結論

問題の食品摂取は約5%と少なく、指導への反応性は自己病状への認識によって異なり、栄養指導の際にも病状認識を進める努力が必要と思われた。

当院糖尿病外来患者の自己病状の認識の実態
―行動変容へつながる療養指導―

道口 佐多子、大場 富美子、佐藤 千代子、中山 由佳、斎藤 三代子、遅野井 健

目的

糖尿病療養に対する姿勢を判断するため、実際の病状と自己病状の認識との差異を検討した。

方法

5回以上の療養指導を受けた糖尿病患者147例(男84、女63、年齢59.5歳、HbA1c7.3%、罹病期間9.9年)の病状の自己評価とHbA1c、合併症の臨床判定を対応させた。

結果

HbA1cの値は81.6%で正しかったが、これによる自己評価は20から30%で甘かった。合併症の自己評価で網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化を「なし」とした例のそれぞれ40.9%、31.2%、41.4%、47.3%に実際は合併していた。個人の合併症の数が増える毎に、何れの合併症もないとする例は減少しており、全ての合併症を認めた23例で合併症の過小評価率をみると、網膜症の17.4%は、腎症の60.9%、神経障害の39.6%に比して低かった。

考察

自己の病状理解は行動の変容への動機付けとなると考えられ、指導時の適切な情報伝達が重要と思われた。

療養指導の効果 ―行動変容につながる効果的な指導のあり方―

大場 富美子、道口 佐多子、佐藤 千代子、中山 由佳、斎藤 三代子、遅野井 健

目的

当院の指導状況を把握する目的で、患者の指導内容の理解度と生活習慣改善の実践状況を調査した。

方法

5回以上の外来指導を受けた2型糖尿病患者132例を対象に、指導項目の理解(糖尿病の知識、食事療法、運動療法、薬物療法、日常生活)と、生活習慣の改善(食事、運動の開始、薬物療法の遵守、測定)の程度を調査した。

結果

疾患や食事療法については殆どが理解でき、それは87.9%が生かされているとしたが、実際には間食(64.1%)、飲酒(77.0%)、外食(75.2%)、食事のバランス(84.9%)などの改善率が低かった。そこで、これらの項目に改善の余地のある例のHbA1c7.4%は余地のない例のHbA1c6.9%に比して高く指導の理解度は低かった。

考察

理解度と日常生活での改善とは乖離する項目があり、行動が伴わない例に対しては自己の病状認識を高めることが必要と思われた。